これは凄い物語だ

魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」目次



結局、ここ最近の休日はこれを読むために使ってしまった。この物語は凄い。面白い。興奮した。そして泣いた。いつの頃からか忘れていた、あの感覚を思い出させてくれたこの作者にこの場を借りて感謝の意を伝えたい。


余談だけど、これを書いたママレードサンドさんってもしかして、


http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=original&all=1501



のヴァルチャーを書いたのと同じ作者なんじゃないだろうか。あるいは、今はもう消されてしまった「ロングアイランドアイスティーの味を覚えているか?」の海老さん、だっけか。


ネットってのは広い様で狭い。これだけの量と質の物語を提供できる人ってのは案外少なく、或いは、別の言い方をすれば、フリーコンテンツとして、これだけの作品を発表しようとする人、しようと思う人は少ない。また持っているテーマ性(人間ではなく魔族寄りの展開、物語内での善悪観)や台詞回し、得意とする知識分野、物語的なはったり技術や、物語の構成方法、そんでもってラストへの持って行き方などから多分同一人物だと推測している。


色々と語りたい部分はあるけど、まとめるなら、物語の下敷きとして既存のRPGの世界観を流用したこと、戯曲形式の表現手法でもって登場人物の固有名詞を極力廃したこと、この二つによって複雑な物語構成を出来うる限り単純化して語ることに成功していること、そしてこの物語の持っているテーマ性が、匿名掲示板での発表という形に何よりも合致していたことが大きいと思う。


商業の場でこの手の作品の発表が無理とは言わない。でも、この作品の持っているテーマ性からしたら、匿名掲示板でのフリーコンテンツとしての発表は最高の方法だったと思う。この作品を紹介するブログが、やたら鼻息が荒いのも、それで納得できる。


以下少しネタバレになるので注意。






個人的な感想としては、メイド姉が自由主義に目覚めて演説を始めるところと、魔族の族長会議での票決でのどんでん返しの連続が凄く好き。他のシーンでも何度も泣いた。書棚に納める事は出来ないタイプで、これからの人生で何度も読み返す物語の一つをまた見つけられたことは、本当に嬉しいことだと思った。


もちろんそれは、この作者だけでなく、この物語を作る下地になった、ドラゴンクエストを始め、今まで触れた全ての物語に対しても。また再び、物語に感謝する日が、こういう形で訪れるとは思わなかった、とある最後の休日の出来事でしたとさ。